文●馬波レイ 編集●ハッチ
「猫は9つの魂を持っている」。そんな伝承をご存知だろうか。本作『九魂の久遠』(くこんのクオン)は、そんな逸話に発想を得たであろうアクションゲームだ。

本作の主人公は猫のクオン。命を落とした彼が目を覚ますと、そこは死後の世界――冥界だというなかなかに衝撃的なシーンから幕を開ける。

クオンの目的は、飼い主の待つ現世へ蘇るために“冥界”を彷徨い、襲いかかる妖魔に立ち向かいながら出口を探すこと。そう聞くと「ネコを操作してのかわいらしいアクションかな?」と思うかもしれないが、ひとふた捻りがあるのが本作の“らしい”ところだ。では、順番を追ってシステムを紹介していこう。
本作のジャンルはスクロールタイプの2Dジャンプアクション。複数のマップが繋がった巨大なステージ内を行き来して、全部で8体+αいるボス妖魔を倒していくことで、現世への出口に近づいていくという流れだ。

命が減るほど強くなる独自の強化システム
本作で独特なのが、主人公クオンが9つの命を持っているという点だ。つまり妖魔の攻撃やギミックに触れるミスをしても、9回まではゲームオーバーにはならない。ただし、ミスをするとクオンの能力や姿は変化をしていく。

ゲームスタート時のクオンは“幼魔形態(ネコ型)”と呼ばれる姿で、見た目は単なるネコ。攻撃を喰らえば一撃で死んでしまうくらいに弱いし、冥界を彷徨う妖魔に対しての攻撃手段は持っていない。そのため、ジャンプを応用した壁登りや、隠された狭い通路を通り抜けるなどして、敵を避けてステージを進んでいくことになる。

シャドウスルーで妖魔やギミックをすり抜けられる!
妖魔への対抗手段がない代わりに用意されているのが“シャドウスルー”だ。一定距離をすり抜ける左右へのダッシュアクションで、発動中は敵や敵の攻撃、ギミックを無傷ですり抜けられる。

さらにボス戦では、ボスの強力攻撃でシャドウスルーを何度か成功させると、“フェイタルスタンプ”が発動可能になる。フェイタルスタンプをタイミングよくヒットさせれば、ボスに大ダメージを与えられる。

アニマリヴァイヴで20種類以上のスキルが得られる!
また、ミスをするとクオンは魂をひとつ減らす代わりに、冥界を彷徨う動物の魂を取り込み、新たな能力をひとつ得て蘇る。それが“アニマリヴァイヴ”だ。

その能力とは、遠/近距離攻撃、多段ジャンプや高速ダッシュ、敵の攻撃を無効化する防御系などと20種以上。中には敵の動きを一定時間止めるといった特異なスキルもある。しかも、アニマリヴァイヴするごとにスキルは追加されていくので、死ねば死ぬほど攻略はしやすくなるというワケだ。

ただし、どのスキルが入手できるのかは半分ランダム。なぜ半分かというと、「死因となった敵や環境に対抗できるスキルが発動しやすい」ルールとなっているからだ。残りの命と引き換えにゲーム攻略がしやすくなるという独自性は目新しく、また「どこまで死んでいいのだろう?」というドキドキ感を味あわせてくれる。




便利なスキルを入手する代わりにわざと命を落とすこともできるが、それはクオンに命の数を減らすだけでない変化をもたらす。
人間の魂を取り込み業魔形態(ヒト型)に!!
その変化とは“業魔形態”。アニマリヴァイヴを繰り返して魂の数が一定数を下回ると、クオンは人間の魂を取り込んで業魔形態(ヒト型)へと変身する。

この形態でのクオンは人間のように二足歩行となり、耐久力(HP)がアップ。爪を使った妖魔への近接攻撃が可能となる。反面、シャドウスルーや隠し通路の利用ができなくなるため、正面切って敵を倒しながら進むアクションゲームへと様変わりする。同じゲーム内で2つの違ったテイストが味わえるのは本作ならではだが、システムを飲み込むまでにはいささか慣れが必要だ。


さらにミスを続けて残りの命が1つになると超戦闘特化型の“九魂逢魔形態”へと変身。ザコ敵を一撃でなぎ払う絶大な攻撃力を得るが、体力が尽きれば即ゲームオーバー。ミスが許されない背水の陣の状態でもある。

ホープポイントの使い道も考えどころ
なお、ステージクリア時には敵を倒すことなどで入手できる“ホープポイント”を消費して、幼魔形態に戻ることができる(ゲームモードによるが)。ホープポイントはクオンの能力強化にも必要なため、無造作に消費することをためらわれる。ときには次の機会までホープポイントを持ち越す選択を迫られることもある。

クオンの強化は前述のホープストーンに加えて、同じくステージ内で入手できる九魂石を消費して行える。これも効果は多彩で、幼魔形態のダメージを肩代わりする勾玉(エクステンドライフ)追加や、アニマリヴァイヴのスキル強化、ホープポイントの入手増加といった項目が並ぶ。どれも攻略の手助けとなるだけになるべく開放したいが、限られた強化用アイテムをどう使うかは頭の悩ませどころだ。


クオンの形態によってボスバトルの攻略法も変わる!
敵や障害物で入り組んだステージを突破し、最後に待ち受けているのが巨大なボス。ゲーム前半の前半の第一部では【妖魔獣人】が4体、後半の第二部では【四神妖】4体が待ち受けている。
いずれのボスも独自の攻撃手段を使って、ダイナミックにクオンを攻撃してくる。前述したようにクオンには2つの形態があるため、それぞれで攻略法がガラリと変化する。

攻撃のできない幼魔形態では、当然ながらシャドウスルーでボスの攻撃を避けることがメインに。アニマリヴァイヴで攻撃スキルを入手していれば、それを使ってダメージを与えることは可能だが、フェイタルスタンプに比べたら微々たるもの。ボスの攻撃を寸前で避けるスリリングなバトルが味わえる。

逆に回避手段が限られる業魔形態では、積極的にボスへの攻撃を狙うことになる。これまでに得たスキルをいかに使いこなすかが重要というわけだ。いずれの形態も、多彩な攻撃方法のボスの攻撃パターンをいち早く掴むことが肝要だが、同じボスでも攻略法がガラリと変化するあたり、プレイのたびに新鮮な手応えが味わえてよいものだ。


切り絵のような独特なグラフィックスも魅力
アクション面やシステム面を中心に紹介してきたが、それ以外の部分にも見どころは多い。切り絵のようなグラフィックスで描かれたステージの様子は、おどろおどろしくもどこか懐かしさを感じさせ、冥界を描き出すのには適した選択だと感じた。

ストーリーの紡がれ方も特徴的で、道中にある大きなマーキングポイント(クリスタル)に触れると飼い主との思い出が浮かび上がってくる。物言わぬクオンに話しかけてくる飼い主・ツクモの優しい声は、気持ちを温かくしてくれるし、物言わぬクオンが、どれだけ現世に戻りたい気持ちを持っているのかを感じさせる。


ほかにも、冥界に落ちて異形へと姿を変えざるを得なかったボスたちのバックストーリーが切なかったりと、アクション一辺倒になりすぎない“こなれ”具合はインティ・クリエイツ作品らしさを感じる。アクションを使いこなし、現世で待つ飼い主の思いを知り、クオンの気持ちとプレイヤーの心が重ね合わさったときにより深い感動が得られることだろう。


いろんな攻略法を見つける楽しさが得られる作品だ
と、ゲームの説明に大半を割いてしまったが、それだけ本作の独自性が強いということ。「こうしたらボス攻略が楽になるかも」「あそこに隠し通路とアイテムがありそうだな」と自分で考えながら遊んでいく楽しみが味わえる。難解そうに見えるゲームシステム遊んでいるうちに自然と覚えられるモノだし、何度死んでもゲームオーバーにならない条件がゆるゆるなゲームモードも用意されている。
同じインティ・クリエイツ製のアクション作と比べたら難易度は低めで、慣れれば2時間でエンディングまで到達。プレイを重ねるほどにオールクリアは楽になる(エンディングも複数アリ)。ぜひ攻略情報などを見ずに、自らの手と頭脳とでクリアーを目指してほしい。

【ゲーム情報】
タイトル名:九魂の久遠
ハードウェア:[パッケージ版]
Nintendo Switch、PlayStation 5
[ダウンロード版]
Nintendo Switch、PlayStation 4、PlayStation 5
Xbox One、Xbox Series X|S、Steam(PC)
ジャンル:アクション
レーティング:CERO C
プレイ人数:1人
パッケージ版価格:通常版5,280円(税込)/限定版9,980円(税込)
パッケージ限定版同梱物:①『九魂の久遠』設定資料集
②『九魂の久遠』サウンドトラックCD(2枚)
③『九魂の久遠』アクリルキーホルダー
パッケージ版予約特典:A4クリアファイル
ダウンロード版価格:4,280円(税込)
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