文●藤田忠 編集●ハッチ

給電しながらUSB Type-Cのデバイスを使えるUSBアダプターが、昨年からAmazonでみかけるようになっている。そうした製品はiPhoneに給電しながら、接続したUSBストレージにApple ProResで録画などが行なえる。
1500~2000円程度の安価なアダプターが数多くあるなか、最も気になったのはUSBストレージの接続、給電だけでなく、映像信号の伝送も可能になっているNextorageの「PDPアダプター(NX-PDPA1)」だ。


この「PDPアダプター(NX-PDPA1)」は、同社が昨年9月に、クラウドファンディングサイトで出資を募った製品で、昨年末からAmazonで、一般販売がスタート。価格は6980円と、Amazonに並んでいる似通ったUSB Type-Cアダプターと比べると、正直割高感は否めないが、最大入力100WのUSB Power Delivery(USB PD)に加え、USBプロトコルとDisplayPort Alt Modeの両方に対応している。
そのため、ホストデバイスに給電しながら、USBストレージへのアクセスや、映像出力が可能になっている。iPhoneなどのスマホだけでなく、ポータブルゲーミングPCとも使い方がマッチすれば、かなり快適になる注目のアダプターと言えるのだ。



ProRes動画の撮影・保存やディスプレイ出力など、あると便利!
このUSB Type-Cアダプターの使い方の定番となるのは、iPhoneなどのスマホでの使用になる。ここではiPhone 15 Proに「PDPアダプター(NX-PDPA1)」を介して、USBストレージとモバイルバッテリーを接続。
USBストレージにProRes動画を撮影、保存したが、まったく問題なかった。さらにType-C-HDMIケーブルを用意すれば、旅行先のホテルのディスプレイと繋げて、その日撮影したiPhone内の写真や動画を楽しめた。
本体USB Type-C オス端子が、スマホケースを想定していないため、デバイスに合わせて延長ケーブルやType-C端子が必要になるが、それ以外の使い勝手に不満はなかった。



最大10Gbpsの転送速度も可能で実用性も高い

スマホでの使い勝手も良好だが、”給電しながらいろいろできる”の本命は、USB Type-Cが1ポートしかないポータブルゲーミングPCとの組み合わせになる。
筆者愛用の「ROG Ally(RC71L-Z1E512)」も、1ポートなので必要に応じてドッキングステーションを使っているが、映像出力やネットワーク端子、カードリーダーといった使用頻度の低い機能も搭載されている。
そのためサイズも大きく、接続時は基本据え置きで、持ち歩きするにもかさばってしまうのが難だった。その点、「PDPアダプター(NX-PDPA1)」なら、USB Type-C メス/オスポートを備え、使いたいUSBデバイスを都度接続できる。ポーチなどにスルッと入れて持ち歩けるコンパクトサイズ。最大10Gbpsの高速転送速度が可能なUSB3.2 Gen2(ホスト側のデバイスを選ぶか、アダプター自体は最大20GbpsのUSB 3.2 Gen2x2に対応する)をサポートと、抜群の汎用性となっている。
愛機「ROG Ally」や、前世代だがUSB4.0に対応しているMSI「Claw A1M(Claw-A1M-003JP)」に、USBストレージや、USBキャプチャーデバイス、ディスプレイを「PDPアダプター(NX-PDPA1)」経由で繋げてみた。


まずは容量不足になりがちなポータブルゲーミングPCの容量を拡張できる、USBストレージのパフォーマンスを確認してみた。
「PDPアダプター(NX-PDPA1)」のUSBプロコトルは、転送速度が最大10GbpsのUSB3.2 Gen2をサポートしている。ここでは、1TB=1万円前後となっているWestern Digital「WD Blue SN580 NVMe 1TB」と、USB3.2 Gen2 USBエンクロージャーを組み合わせたUSBストレージ。さらにNextorageのポータブル1TB SSD「NX-P2SE1TB/ENET」、USB4.0エンクロージャーを用意して使用してみた。ストレージパフォーマンスは「CrystalDiskMark 8.0.5」で確認した。


「ROG Ally(RC71L-Z1E512)」から確認すると、「PDPアダプター(NX-PDPA1)」経由(100W PDアダプター使用)で、最大10Gbpsの転送速度を発揮するUSB 3.2 Gen2の読み書き速度を発揮できていた。
続けてUSB4.0ポートを装備するMSI「Claw-A1M-003JP」を試すと、こちらもしっかりとパフォーマンスを発揮していた。ポータブルゲーミングPCも内蔵ストレージは、PCIe4.0×4 NVMe M.2 SSDが主流のため、USBストレージと比べると読み書き速度は下がってしまうが、ゲームデータの保存先にも十分使えそうだ。


「Steamライブラリフォルダー」の追加も可能
「PDPアダプター(NX-PDPA1)」を使うことで、給電しながら、読み書き速度1000MB/sec前後のストレージ拡張が可能になったROG Allyだが、実際にゲームデータのストレージとして使えなくては意味がない。接続したポータブルSSDの「NX-P2SE1TB/ENET」を、「Steamライブラリフォルダー」として追加、ゲームタイトルを移動してプレイしてみた。


ここではストレージの速度があまりプレイ感に影響しないと思われる「ドラゴンクエストIII そして伝説へ…」のゲームデータを、USBストレージに移動、実際に2時間程度プレイしてみたが、まったく問題なくプレイできた。USBストレージから起動して、プレイするだけでなく、プレイするときに本体ストレージに移動するといった、一時退避先として使うのも良いだろう。
本体を手に持ってプレイするには、「PDPアダプター(NX-PDPA1)」とUSBストレージのケーブル取り回しと固定に、ちょっとした工夫が必要になるが、読み書き速度が遅いmicroSDを使ったり、本体NVMe SSDを換装したりせずとも、「ROG Ally」などのストレージ容量を増やせるのは大きな魅力となる。

USBキャプチャーやディスプレイもオッケー

「PDPアダプター(NX-PDPA1)」を経由して、AVerMedia「Live Gamer ULTRA 2.1 GC553G2」や、USB Type-C-HDMIケーブルを使ってディスプレイを繋げてみたが、ともに問題なく使用することができた。
個人的には「ROG Ally」をアダプターとHDMI変換ケーブルでネットカフェのディスプレイに接続。大画面でゆったりゲームプレイするといった使い方は、かなりアリだった。

ただ、給電しながらUSBストレージを使いたい!というだけなら、Amazonで販売している安価なアダプターを選ぶのもおすすめだ。実際に2000円前後で販売されている「Cablecc 10Gbps USB-C タイプC 1-to-2 USB-C メス OTG & 100W PD 電源アダプタ」を試したが、ROG Allyで問題なくUSBストレージを認識し、最大で1000MB/sec台の読み書き速度を発揮した。もちろん、「Steamライブラリフォルダー」としての追加、移動したゲームタイトルの起動、プレイも問題なかった。





バッテリー残量を気にせずにアレコレしよう
Nextorageの「PDPアダプター(NX-PDPA1)」は、スマホとROG AllyなどのポータブルゲーミングPCの両方で使うなど、使い方次第で十分6980円の元を取れると感じた。
個人的にはROG Allyを取材や旅行時に持っていき、バッテリー残容量を気にせずに、宿泊先のテレビやディスプレーでゲームを楽しめるのは、気に入ったところだ。自分の使い方にマッチするアダプターを購入して、給電・充電しながら、スマホやポータブルゲーミングPCをより便利に使おう。
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