文●藤田忠 編集●ハッチ

ピラーレスデザイン&3基のLEDファンで、7980円という圧倒的コスパを実現したドスパラ「ドスパラセレクト XR」や、八角柱デザイン採用の「The Tower」シリーズなど、お!コレで組んでみたいと思うPCケースが、続々と増えている今日この頃。
そんな多くのPCパーツショップに並んでいる、旬なPCケースで組むのも楽しいが、Amazonのみで購入できるPCケースも結構あるのだ。それが、おもしろそうなPCパーツを探しているときに見つけた、SGPCというメーカーのMini-ITX PCケースだ。

SGPCのケースは白色ベースの筐体にビデオカード搭載の有無や、Flex ATX電源ユニットを必要とするモデルなど、なかなか魅力的なラインアップを揃え、価格も1万円アンダーと良い感じなのだ。そこでゲーミング最強CPUとなる「Ryzen 7 9800X3D」を搭載したコンパクトゲーミングPCを組むべく、2スロット以上のハイエンドクラスのビデオカードを搭載できる「K77 LITE」を購入、実際に組んでみた。


「K77 LITE」は、全高135mmまでのCPUクーラー、ボード長280mmまでのビデオカード(SFX電源ユニット使用時)、3スロットの拡張スロット、ATX/SFX/SFX-L電源ユニットに対応。幅160mm、奥行き290mm、高さ250mm(スタンド含まず)の筐体サイズとしては、優秀な内部拡張性を備えていると言える。小型PC自作で気になるエアフローも、強化ガラスパネル側に120mmファン×1、トップ、ボトム、リアに計6基の92mmファンを搭載可能と、必要十分だろう。
不満点はあるが満足ゆく点も多い仕様
まずは購入した「K77 LITE」をじっくりと眺めてみた。全体の品質は良好でフーレムにバリなどはなく、白色塗装にも気になるところはなかった。フロントにUSB Type-Cポートを備えているが、接続はUSB3.1 Gen1ヘッダーピンになっている、付属のダストカバーの固定がマグネットではなく、両面テープになっているといったマイナス点もあるが、総合的には高得点をあげられそうだ。

















組み込む構成次第だが吸排気に不足なし
組み込むパーツ構成次第だが、搭載できるケースファンは最大120mmファン×1と92mmファン×6と多い。120mmラジエーターの搭載にも対応している。設置場所は強化ガラスパネル側になるが、ケースフレームと強化ガラスパネルの間にスペーサーを使うことで、外気を取り込めるようになっている。










Ryzen 7 9800X3Dや老舗FSP電源ユニットなどを採用

外観チェックで「これは無いな~」という点はなかった「K77 LITE」だが、実際に組んで分かる点もある。ここからは、組みやすさを確認していこう。
現状、最強のゲーミングCPUと言えるRyzen 7 9800X3Dや、WQHDゲーミングを狙え、8万円前後で買えるAMD Radeon RX 7800 XT搭載ビデオカードを組み合わせて、コンパクトなハイエンドゲーミングPCを組み上げた。

そしてコンパクトなPC自作のパーツ選びで大事なCPUクーラーとSFX電源ユニット。CPUクーラーには全高123mmと小型ながらTDP180Wが謳われているID-COOLING(アイネックス)「FROZN-A400-BLACK」をチョイスした。



そして組みやすさとケース内の冷却面に影響する電源ユニットには、老舗電源ユニットメーカーであるFSPから発売されているSFX規格の850W電源ユニット「DAGGER PRO ATX3.0(PCIe5.0) 850W White(型番:SDA2-850 Gen5.W)」(DAGGER PRO ATX3.0)を選んだ。
ホワイトモデルは筐体だけでなく、各種電源ケーブルのコネクター部も白色になっているのもポイントだが、最も惹かれたのは内蔵ファンのセミファンレス動作の挙動だ。DAGGER PRO ATX3.0は高負荷時や、ある程度高い温度でないとファンが回転しない静音指向になっている。しかしながら、内部スペースとエアフローが限られるコンパクトPCケースだと、ファンが回転しないことで、内部温度の上昇に繋がることもある。
その点、DAGGER PRO ATX3.0はファンを停止させるしきい値が、比較的低めな負荷20%以下かつ内部温度25℃以下となっているのだ。「K77 LITE」では電源ユニットの吸排気はともに内部なので、あまり意味はないのだが、ケース内部に風の流れを生み出すのでありと判断した。
そのほかにも、各種ケーブルはコンパクトなPCケースでの自作と相性の良い短めかつフラット形状を採用、最大600Wまで供給できる12VHPWRケーブルの付属と、文句なしの仕様になっている。





組み立てはスムーズに完了!組みやすさは問題なしだ
CPU 12Vケーブルや、ファンケーブルの取り回しは、少し考えながら行う必要はあるが、「K77 LITE」と本構成なら自作PCを組んだことのある人なら、スムーズに組めるだろう。たまにある、マザーボードのリアインターフェースカバーがPCケースと干渉するといったこともなく、マザーボードの固定はスムーズに行えた。





動作時の騒音値は40dBAをキープ
「K77 LITE」で組み上げたRyzen 7 9800X3DとRadeon RX 7800 XT搭載のゲーミングPC。そのパフォーマンスや、高負荷時の動作音をチェックしていこう。
ファンの回転数は実際に使用する際と同じように、マザーボードのBIOSで静音よりにカスタマイズした。そのため、高負荷時の温度は上昇傾向にあるが、動作音はケースフロントから左斜め前40cmほどの位置で、40dBAアンダーを維持できている。








CPU温度は高いがしっかりとパフォーマンスを発揮
まずはCPUがフルロードされる「Cinebench 2024」と「CINEBENECH R23」を実行した。同時に、実行中のCPU温度などは「HWiNFO64 Pro」でチェックした。


「Cinebench 2024」と「CINEBENCH R23」のスコアは、16スレッドで動作するRyzen 7 9800X3Dの性能を、しっかと引き出した数値となっている。ただ、テスト実行時のCPUコア温度は、上限の95℃に達してしまうこともあった。
パフォーマンスのダウンは感じられないが、Ryzen 7 9800X3Dを小型PCケースで運用するには、もう少し大型のCPUクーラーが理想かもしれない。とは言え、全高135mmまでなので、選択肢は限られるところだ。

続いてはゲーミングパフォーマンスだ。最新ゲームタイトルのWQHDゲーミングを狙えるGPUパフォーマンスに、16GBのグラフィックメモリーを搭載し、最安価格帯が7万円台まで下がっているRadeon RX 7800 XT搭載ビデオカードは、『モンスターハンターワイルズ』にオススメと言える。
実際、CPUは異なるが第1回目のオープンベータテストではアップスケーリング技術「AMD FSR3」とフレーム生成を活用することで、WQHD、最高画質で100fps超えのフレームレートを維持できていた。
『モンスターハンターワイルズ』は、2月7日~10日、14日~17日に第2回オープンベータテストが開催されるので、楽しみに待つとして、ここでは高負荷ゲームタイトルの『S.T.A.L.K.E.R. 2: Heart of Chornobyl』、『インディ・ジョーンズ/大いなる円環』、『Microsoft Flight Simulator 2024』を、ターゲットのWQHD解像度でプレイしてみた際のフレームレートを確認していこう。
各ゲームタイトルのグラフィックス設定は、以下の通りだ。『S.T.A.L.K.E.R. 2: Heart of Chornobyl』は最高画質で、「AMD FSR3.1:バランス」、「フレーム生成:有効」でプレイ。GPU負荷の高い序盤拠点「ザリシア」を一定ルート移動。その際のフレームレートを「CapFrameX」で記録している。
続いて『インディ・ジョーンズ/大いなる円環』は、「全体的なグラフィック品質」を「高」に設定。フレームレートはチュートリアルのジャングルを一定ルート移動した際を記録している。最後の『Microsoft Flight Simulator 2024』は、「グローバル レンダリング品質」で「ミドル」を選択。グランドキャニオン飛行時のリプレイデータを使って、約3分間飛行した際のフレームレートを記録した。

『S.T.A.L.K.E.R. 2: Heart of Chornobyl』は、WQHD解像度で144Hz張り付きプレイとはいかないが、平均フレームレートは十分スムーズにプレイできる120fps台を記録し、1% Low avgも95fpsと余裕だ。NVIDIA次世代GPUのGeForce RTX 50シリーズを含め、GeForceに最適化されていると言える『インディ・ジョーンズ/大いなる円環』だが、こちらも高画質で快適に楽しめるフレームレートを発揮している。
GPU負荷の高い『Microsoft Flight Simulator 2024』は、1% Low avgが60fpsを下回ってしまったが、平均は余裕の90fps台を記録。飛行する場所で負荷は変わるが、空の旅を十二分に楽しめるだろう。
最後に『Microsoft Flight Simulator 2024』をプレイした際のCPUとGPUの温度を確認しておこう。各種値数値は「HWiNFO64 Pro」で記録し、プレイ後半10分間の推移を抽出してみた。


「Cinebench」実行時のCPU温度(CPU (Tctl/Tdie))は95℃に達していたが、『Microsoft Flight Simulator 2024』のプレイ中は最高でも81℃で、動作クロック5215MHzを維持しながら、CPU温度はおおむね60℃台後半という不安のない温度で推移している。
ビデオカードは、メモリー温度(GPU Memory Junction Temperature)が最高90℃を記録したが、GPUコア温度(GPU Temperature)は70℃台前半を維持している。
ゲームプレイ中の動作音も気にならないほどと、もくろみ通りのコンパクトゲーミングPCの完成となった。
満足ゆく1台を組めた「K77 LITE」
今回は筆者の好みの仕様である「K77 LITE」に、ゲーミング特化のRyzen 7 9800X3D&Radeon RX 7800 XTを組み込んだ。この構成は話題の重量級ゲームタイトルや『モンスターハンターワイルズ』を快適に楽しめるものだが、「K77 LITE」はさまざまな構成にも対応できる。品質、組みやすさ、エアフローも問題ないのでオススメだ。

Amazonでは、1万円を切る価格でサイズ、スペックの異なるSGPC製Mini-ITXケースをいくつか用意しているので、Mini-ITX自作に興味のある人は確認してみよう。なお、Amazonでトラブル少なく購入する際の基本だが、発送元がAmazonなら、初期不良時などの対応はAmazonが行ってくれる。SGPCのケースは基本、発送元はAmazonだが、購入時の確認は忘れずに行おう。
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