臨場感MAXの恐怖演出
次に取り上げたいのは恐怖演出。悪夢のような世界を探索しなければならない恐怖、グロテスクなクリーチャーと対峙する恐怖など、「もう勘弁してくれよ……」と弱音を吐いてしまうぐらいの絶望が待っている。
この不条理極まりない恐怖こそ、「SILENT HILL」シリーズ独自の魅力と言ってもいいだろう。演出としては、音楽や絶叫、スプラッターを駆使してビビらせる欧米ホラーというよりも、場の雰囲気で少しずつ恐怖をもたらすジャパニーズホラーに近い。
『SILENT HILL 2』は誰もいないゴーストタウンが舞台で、その多くが不気味な廃墟と化している。人っ子一人立ち入らない場所に、人ならざる何かがいたら……? あってほしくないことを連想させる雰囲気がとてつもなく恐ろしい。このように、本作は人を怖がらせる雰囲気づくりと、人を疑心暗鬼にさせる演出が秀逸なのだ。


本作をプレイしてもっとも怖かったのが、暗闇だ。オリジナル版でも相当苦しめられた暗闇だが、リメイク版はライティング効果が進化しているためか、闇の恐怖が倍増していると感じた。
下記の画像を見ればわかると思うが、本作は懐中電灯がないと歩けないぐらいに暗い。いや、暗すぎるのだ。懐中電灯を照らした先にクリーチャーが立っていたら、背筋が冷えるほどの恐怖に襲われるだろう。

また、立体音響を採用している点も大きなポイントだ。360度全方位から環境音やクリーチャーの足音、悲鳴、不協和音が聞こえるわけだが、聞けば聞くほど「何かがいるのでは?」と不安になってしまう。そのうえ立体音響によって、ゲームの世界にいるような臨場感も味わえるのだ。部屋を暗くし、ヘッドセットを装着して本作を遊んでみてほしい……。
人間の闇を見つめる重厚なストーリー
「SILENT HILL」シリーズのストーリーは「人間の心に潜む闇」を題材にしていて、心に傷を負った登場人物たちのドラマが展開される。もちろんホラーなのだが、人間の心に関するメッセージに強く惹かれてしまうのだ。
中でも、『SILENT HILL 2』では心の弱さや業など、人間の闇を深く追及したストーリーを体験できる。街に迷い込んだ登場人物たちに救いはあるのか、それとも哀しい末路を辿るのか。そして、主人公のジェイムス・サンダーランドがどのような決断を下すのか。結末まで目が離せなくなるストーリーも本作の魅力だ。


特筆すべきは、本作のシナリオには明確な答えが存在しないこと。カットシーンや資料などの情報をもとに、プレイヤー自身で考察しなければならない。ゲームをクリアする面白さだけでなく、ストーリーを考察する面白さも含まれているのだ。筆者が「SILENT HILL」シリーズを愛してやまない理由はそこにあると言っても過言ではない。


リメイク版『SILENT HILL 2』も傑作だった!
『SILENT HILL 2』のリメイク版をプレイする前、筆者は完成済みのオリジナル版を再構築することに懸念を抱いていた。だが、リメイク版は予想以上に素晴らしく、オリジナル版に匹敵する作品に仕上がっていた。はっきり言って本作はリメイクの成功例だ。

グラフィックスはもちろん、肩越し視点や戦闘システム、謎解き要素、恐怖演出も進化を遂げていて、まったく新しい『SILENT HILL 2』を体験できる。本作はリメイク作品ではあるが、ある意味シリーズ完全新作と思ってもらっていい。劇的に生まれ変わった『SILENT HILL 2』に、誰もが度肝を抜かれるはずだ。
名作のリメイクだからといって臆することはない。不安の先には、約束された傑作が待っているからだ。23年前の思い出をもう一度体験してみたい方、『SILENT HILL 2』をプレイしてみたい初見の方は、ぜひリメイク版をプレイしてみてほしい。
【ゲーム情報】
タイトル:SILENT HILL 2
メーカー:KONAMI
ジャンル:サイコロジカルホラー
発売日:2024年10月8日
希望小売価格:
スタンダードエディション:8,580円(税込)※パッケージ版はPlayStation(R)5のみ
デラックスエディション:9,790円(税込)※ダウンロード版のみ
対応機種:PlayStation(R)5、Steam(R)
CEROレーティング:C(15歳以上)
©Konami Digital Entertainment
コメント