CPU性能はまずまずだが、GPU性能はかなり低い
では、気になる性能を簡単にチェックしたい。「MINISFORUM S100-WLP」はeMMCではないが、現行のスマホによく使われている同じフラッシュメモリのUFS 2.1をストレージに採用している。容量は128GBと256GBで選べる。
ストレージの速度はCrystalDiskMarkで計測した。

速度はシーケンシャルリードで922.13MB/s、シーケンシャルライトが266.91MB/sで、最近のSSDと比べるとかなり遅い。とはいえ、HDDよりは速いので、特に大きいファイルを使うことのない本製品での使用なら十分と言える。
CPU性能を計測する定番のCINEBENCHは、昔のAtomeと比較したかったため、あえて古いCINEBENCH R20で計測してみた。

計測結果はマルチコアで372pts、シングルコアで210ptsだった。筆者が所持している世界初のゲーム機型PCの「GPD WIN」は、CPUにAtom x7-Z8750を搭載していたが、それでマルチ108pts、シングル70pts。GPD WIN2のCore m3-7Y30ではマルチ531pts、シングル204ptsだったので、かつてのCore m3には及ばないまでも、そこそこ高い性能があることが分かる。
次に総合ベンチマークソフトの定番であるPCMark 10でスコアを計測してみた。

PCMark 10ではビデオ会議やブラウジングなどに関わる「Essentials」と、オフィス作業に関わる「Productivity」はスコアが3000以上とやや高かったが、写真や動画編集などクリエイティブ関連の「Digital Content Creation」は1100台とかなり低い。
Eコアしかないため、負荷のかかる作業では性能が発揮されず、内蔵GPU性能も引き出せないと思われる。
スティックPCの「m-Stick MS-NH1-64G」はOSがWindows 8のため、現行のベンチマークソフトで動作するものが少なかったが、簡単な性能比較用にWindows 8.1で廃止されたWindows エクスペリエンス インデックスを復活させて性能比較できる「WIN SCORE SHARE」でスコアを計測。「MINISFORUM S100-WLP」と比較してみた。


結果は上記のとおり。CPU(プロセッサ)性能は3.5倍以上、メモリ性能は1.4倍以上と差を付けたが、グラフィック性能は1.6ポイント負け、ゲーム用グラフィックスは0.0とスコア表示もされなかった。
Eコアのみを採用したCPUであるため、省電力で高い処理能力こそ有しているが、やはり負荷がかかる内蔵GPUを使うアプリに関しては、ほぼ動作しないと考えて良さそうだ。
試しに、いくつかのゲームをプレイしてCapFrameXでフレームレートを計測してみたが、現行のCore iプロセッサやRyzenプロセッサの内蔵GPUでも60fpsを下回らない2D格闘ゲームの『MELTY BLOOD: TYPE LUMINA』ですら、1280×720ドットのHD画質で、平均22.5fpsとガクガクで遊べるレベルではなかった。

軽いゲームといえば、一枚絵で構成されるアドベンチャーゲームではどうだろうか?MAGES.がリメイクしたSteam版『この世の果てで恋を唄う少女YU-NO』で動作をチェック。


©MAGES. Licensed to and Published by Spike Chunsoft Co., Ltd.
さすがにアドベンチャーゲームは軽いようで、平均60.3fpsと常に60fpsに張り付き、画面切り替え時などで瞬間的にフレームレートが落ちることはあるようだが、快適にプレイできた。
最後にレトロゲームとして、2024年10月24日にリメイク版『ロマンシング サガ2 リベンジオブザセブン』の販売が予定されている『ロマンシング サガ2』(2027年Steam発売版)をプレイしてみた。


© 1995, 2019 SQUARE ENIX CO., LTD. All Rights Reserved.
現在Steamで配信されている『ロマンシング サガ2』は、スマホ版の要素も加えた移植作で、元と同じ30fps頭打ちであるため、平均29.5fpsと快適に動作。こちらも瞬間シーン切り替えで落ちているのか、P1は16.1fpsとなっているが、特に画面のカク付きなどもなく快適にプレイできた。
セカンドPCやTVパソにはアリだがゲームには向かない
「MINISFORUM S100-WLP」はCPUにインテル プロセッサー N100を採用。もちろん、Core iプロセッサーなどと比べるとたまに動作の遅さを感じることもあるが、4コア/4スレッドとマルチコア性能は低いが、オフィスアプリを使ったり、ネット動画視聴したりするには十分な性能を有する。
圧縮ファイル解凍ソフトの「7-Zip」のベンチマーク比較では、スティックPCの「m-Stick MS-NH1-64G」よりも4倍は高速にファイルの解凍ができ、Eコアのみとはいえ、昔のネットブックやスティックPCなどよりは間違いなく処理性能が高いことが伺える。
スティックPCよりは大きいが、その分USB Type-Aに周辺機器が挿せるので、より利便性は高い。このサイズで条件付きだが2画面出力もできるので、屋外でのサイネージ利用にも好適だ。
一般的なビジネスノートPCでもギガビットLANが多いなか、2.5Gの高速なLANポートを備えるため、クラウドサービスなどを使うにも快適で、サーバー用途などにも活躍できるだろう。
サイズが小型なため、長期出張中のメインPCが壊れた際の予備機として忍ばせる需要にも向く。テレビに接続してテレパソとして使うなど、かつてのスティックPCと同じ用途でも重宝する。
しかし、GPU性能は非力で、軽いゲームPCのプレイにも向かない。せいぜい動作できるのは、ブラウザーゲームかアドベンチャーゲーム、またはレトロゲームといったところ。高解像度写真や動画の編集・変換も厳しいだろう。
あくまで性能に見合った使い方なら活躍できる、といった製品だが、それはかつてのスティックPCと同じだ。とはいえ、このサイズでは珍しい2画面出力と、高速通信が可能な構成は面白い。そのメリットを見定めれる人は購入を検討してみるといいだろう。
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