Core Ultra 9搭載で高性能なデスクトップ向けCPU並みの性能
ちなみに、「AtomMan X7 Ti」は4インチのディスプレイをタッチ操作して、3つのパフォーマンス設定に変えられる。今回の検証では最も性能が高い「パフォーマンスモード」にして、気になる性能を検証してみた。検証時のインテルのグラフィックス・ドライバーバージョンは、31.0.101.5445。
まずはCPU性能を定番のCINEBENCHにて検証したい。筆者はこれまで個人的に好きなので数多くの小型PCに触れて来た。「AtomMan X7 Ti」はモバイル・プロセッサとはいえ、最新の最上位モデルを備えている。
そのため、最近流行りのゲーム機型PCや、しばらく前に検証したデスクトップ向けCPUを搭載できる小型のベアボーンの「DeskMini X600」などと比較して、どの程度の差が生まれるのかを中心に確認してみたい。CINEBENCHは2024が最新だが、未だ旧製品比較にも使われるR23でも測定した。


CINEBENCH R23はマルチコアが18000超えと、AMDのゲーム向けデスクトップ・プロセッサ「Ryzen 7 7800X3D」並み。ゲーム機型PCに搭載されたモバイル・プロセッサでは、Cinebench 2024がマルチコアで600pts超えれば良い方で、DeskMini X600で検証に使用したRyzen 5 8600Gでも740pts。
DeskMini X600では、マルチコアが16000台まで出る「Ryzen 9 7900」も搭載できるが、より小型でモバイル・プロセッサ搭載機として考えれば、現在最強クラスの性能を誇ると言って良いだろう。
次に総合ベンチマークソフトの「PCMark10」のスコアをチェックしたい。

PCMark10の総合スコアは、7006とこちらはDeskMini X600で使ったRyzen 5 8600Gの7240にわずかに劣る結果となった。内訳で比較すると、写真や動画などのクリエイティブに関わる「Digital Content Creation」では勝るが、オフィス処理の「Productivity」とビデオ会議などの日常使いに関する「Essentials」ではスコアで劣っている。
AMDのプロセッサは、近年のインテル製プロセッサと異なり、コアはいずれもSMT(Simultaneous Multi-Threading)に対応している。つまりは、すべてがPコアと同じようなものなので、その並列処理の差でCPUのベンチマーク以上の差が若干生まれた可能性がある。
では、内蔵GPU性能はどうか。定番の3DMarkの結果を確認していきたい。

3DMarkでは、Fire Strikeでスコアが7184と、CPUとしては高い内蔵GPUを搭載するRyzen 5 8600Gの6820を超えている。AMD Ryzen 8000Gプロセッサは、上位のRyzen 7 8700Gがある。それにはおよばないかもしれないが(メモリ性能などのにもよる)、モバイル・プロセッサとしては高い、CPU性能に見合ったGPU性能を有していることが分かる。
CPU内蔵GPUなど、外付けのビデオカード(dGPU)を搭載しない、性能が低いPCのGPU性能に長く使われている「ドラゴンクエスト10」のベンチマークソフトでも動作を見てみた。

「ドラゴンクエスト10」ベンチマークソフトは、解像度がフルHD(1920×1080ドット)で画質が「最高品質」でもスコアが20000を超え、「すごく快適」評価。Ryzen 5 8600Gでは、スコアが10525だったので、それよりは2倍近い性能差を示した。
今度は定番の実ゲームベンチマークとして、発売が間近に迫った最新拡張尾バック『ファイナルファンタジーXIV』(FF14)のベンチマークソフトでスコアを計測してみた。FF14のベンチマークソフトは黄金のレガシーが最新だ。
この黄金のレガシー対応のベンチマークソフトは、AMD FidelityFS Super Resolution(FSR)や、NVIDIA DLSSといったアップスケーリング技術に対応している。残念ながらIntel XeSSには非対応だ。そこで、「ダイナミックレゾリューションを有効にする」をオフにして計測したところ、3411とかなり低い数値が出た。
FSRはインテルCPUに非対応だが、試しにFSRを常に有効で計測したところ、スコアは7960となった。これは、Ryzen 5 8600Gの8242よりも低い。FF14黄金のレガシーのベンチマークは、不具合も抱えているという報告もあり、改善されたという話も聞かないので、一応前回の「ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ」のベンチマークソフトも試してみた。

解像度フルHDで、画質は「標準品質(ノートPC)」のフルスクリーンで、スコアは9943とまずまず。Coore Ultra 7 155Hを搭載し、4月末のドライバアップデートで性能が大幅にアップしたMSIのゲーム機型PC「Claw A1M」の9536よりも高く、Core Ultra最上位の面目躍如といったところだ。最新作「黄金のレガシー」もプレイは問題なく行なえることに期待したい。
最後に、今年5月に配信されたばかりのオープンワールドアクションRPGの『鳴潮』で、平均フレームレートを計測してみた。『鳴潮』はDeskMini X600で検証した限りでは、『原神』よりは重く、ややCPU内蔵GPUでは厳しい印象だったが、果たして結果はどうだろうか。
検証はCapframeXを使って1分間動き回った平均フレーム―レートを測定している。本作は解像度を下げてのフルスクリーンモードはできないため、ウィンドウモードにして、解像度をWQHD(2560×1440ドット)、フルHD(1920×1080ドット)の2パターンで測定してみた。

『鳴潮』はRyzen 5 8600Gだと、画質「極低」、解像度がHD(1280×720ドット)でなければ60fps近い動作にならなかった。しかし、「AtomMan X7 Ti」ではフルHDでも画質が「極低」なら平均57.7fps、画質が「高」でも50.9fpsとまずまず快適に動作していた。
解像度がWQHDになると、さすがにやや重くなったが、それでも画質「高」で36.3fpsと、きちんと30fps以上をキープしているところは、この手のサイズのPCとしては優秀と言えるだろう。
省スペースでメインPCとしても使える性能は魅力
「AtomMan X7 Ti」はインテル第14世代の最上位モバイル・プロセッサ「Core Ultra 9 185H」を備え、クリエイティブ用途でも使える32GBメモリに、1TB SSDと十分なデータ保存容量もあり、普段使いから、ちょっとしたクリエイティブ作業までこなせるPCに仕上がっている。
4インチのディスプレイは、ステータスを表示するほか、時計を表示できるのは良いが、現状天気に関してはどの場所のデータを拾っているのかが分からない。OS起動した後に、同社の「SCCSLaunch」を起動するとディスプレイの表示が使えるようになるが、タスクバーに常駐したり、設定できたりする訳ではないので、細かいカスタマイズができなさそうだ。
このあたりの動作は、サンプル機のためなのかが分からないが、せっかくディスプレイが内蔵されているなら、もう少しカスタマイズをさせて欲しかった。
とはいえ、性能に関しては申し分なく、価格的にも性能を考えれば妥当か、少しお得なくらい。高いCPU性能に加え、最新のAPUのミドルクラスよりは高いGPU性能も有しているので、軽めのPCゲーム以外にやや重いPCゲームも画質設定次第ではフルHDで遊べる。
ディスプレイを搭載し、スタンドで立てられることで、机に直置きしているよりはやや家電のような趣があるので、部屋のインテリア的なおしゃれ感もある。少し癖はあるが、省スペースの小型ながら普段使い以上の高い性能を有した、一風変わったPCが気になるという人には、オススメできる1台だ。
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